思考力を鍛える超シンプルなA4メモ書き
どうしてあの人はあんなに頭の回転が早いんだろう?
あの人の説明が腑に落ちる理由が知りたい
このイライラする感情をなんとかしたい
こんな思いを抱くことって、誰にでもあると思います。
自分は頭の中が整理するのが苦手でした。
次々と色々な考えが浮かぶものの、うまく相手に説明できない。
取るべき行動の選択肢は色々思いつくものの、うまく意思決定できない。
そういう状態ってもどかしいですよね。そんな状況を何とかしたくてとったのが本書です。
今回紹介するのは「ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング」。
A4用紙を使ったシンプルなメモ書きが、頭の回転を早くする・コミュニケーション能力が上がる・ネガティブな感情にうまく付き合えるようになる、などの多くの効果を発揮します。
著者はマッキンゼーで14年間コンサルタントとして働き、現在は「日本発の世界的ベンチャーを生み出すこと」を掲げるブレークスルーパートナーズ代表の赤羽雄二さんです。
内省の資質が高い人にとって、内省の質、スピードを劇的に向上させる方法について、参考になるはずです。
この記事の目次
内容紹介 -内省の観点から
考えを言葉にする訓練が必要
頭がいい、仕事ができる、という時、実は言葉への感覚が鋭く、そのためにコミュニケーション能力の高さが光って見えることが多い (第1章より)
誰だって頭ではいつでも何かを考え、感じ、なんらかのイメージを浮かべている。ただそれが、言葉として認識する前にすぐに消えてしまう。
ところが、「思考は言葉によってなされる」ので、言葉にできないと深く考えることはできない。
イメージや感覚を言葉にすることに慣れている人は、考えが整理されており、自分の気持ちや思っていることをスムーズに表現できるようになる。
スムーズな表現ができると、他者とのコミュニケーションが円滑になったり、自分の感情とうまく付き合えるようになる。考えが整理されているので、仕事もできるようになる。
これが「言葉に慣れてきた、言葉を使える」状態。そして、
そうした思考の「質」と「スピード」、双方の到達点が「ゼロ秒思考」だ。
ゼロ秒とは、瞬時に現状を認識し、瞬時に課題を整理し、瞬時に解決策を考え、瞬時にどう動くべきか意志決定できることだ。
しかし思考を言葉にできるようになるには訓練が必要。
思考を言葉にする訓練:A4メモの概要
言葉にする訓練として考え出されたのがA4メモ。
下がメモ書きの例(「ゼロ秒思考」p93より引用。青字:管理人加筆)
メモ書きの際は、ルールがある。例えば、
・A4用紙を横にし、1枚に1テーマ、1分以内に書く。
・メモの構成要素はタイトル、日付、本文。
・タイトルについて、頭に浮かんだことをそのまま躊躇せず書く。同じタイトルでも良い。
・日付について、時間がかかるので漢字ではなく、短縮して書く。
・本文ついて、4−6行以内、20-30文字を目安。
など。
それぞれのルールには全て根拠がある。各行20-30文字なのは、短すぎると具体性が不足し、頭の中のモヤモヤを言語化する訓練にならないから。1分以内なのは、時間をかけすぎたからといって良いものができるわけではないから。
そして、このA4メモを毎日10枚書くことで、頭の回転が恐ろしいほど早くなる。
※効果が最大になるように考えられた詳細なルールがありますので、実践の場合は必ず本書を参考にしてください。
A4メモの効能
「思考を言葉にする」過程で、次のような効能がある。
- メモを書くと、頭が整理される
「暗黙知」がはっきりした形になり、「形式知」となる。 - メモを書くと、自信が出てポジティブになる
頭が整理されると大事なことに取り組める。成果が出るので自身が出る。 - メモを書くと、腹が立たなくなる
感情も遠慮なく吐き出すことで、自分を客観視できる。 - メモを書くと、急成長できる
以上の好循環が起こり、急成長につながる
A4メモの応用例:ロジックツリー作成
A4メモを深掘りすることで、ロジックツリーに対応したものを作ることができる。
ロジックツリーの縦の関係(親子関係)を作るには、1枚目のA4メモの各行をタイトルにして次のA4メモを書く。
横の関係(並列関係)を作るには、1つのテーマを多面的に書く。同じテーマに対して、視点を変えたタイトルでA4メモを書く。
こうすることで、自分の頭の中のロジックツリーを明確化できる。
メモの場合は、構造を考えず思いついたものをひたすら書くことで、自然とロジックツリーのように整理されたものができる特徴がある。
本の目次
第1章 「考える」ためのヒント
・頭に浮かぶイメージ、感覚を言葉にする
・言葉を自由に、的確に使うことを目指す
・言葉の中心的意味とゆらぎを捉える
・浅い思考、空回りの思考を避ける
・「沈思黙考」も「話すだけ」も難しい
第2章 人はゼロ秒で考えられる
・時間をかければ考えが深まるとは限らない
・できる人、優れた経営者は即断即決
・究極はゼロ秒思考
・ゼロ秒思考と情報収集
第3章 ゼロ秒思考をつくるメモの書き方
・タイトルの書き方
・本文の書き方
・思いついたことは、とにかくなんでも書く
・メモはA4用紙の裏紙に
・メモは毎日10ページ書く
・1ページ1分で、思いついた瞬間に書く
・ノートや日記、ワードなどではダメな理由
・メモを1分で、どこでも書けるようにする工夫
・感情を考えに、考えをメモに
・状況、ニーズ別のメモのタイトル例
第4章 メモを使いつくす
・メモは深掘りするとさらに効果的
・一つのテーマを多面的に書く
・メモの発展型
・目元ロジックツリーの関係
・メモから企画書をまとめる
・チームメンバーや家族にもメモ書きを
第5章 メモの整理・活用法
・クリアフォルダに分けて整理する
・フォルダの分類を見直す
・メモのその後
※この内容紹介は、著者、書名、出版社、出版年より引用しました。
書評
繰り返しになりますが、この本の要点は、
- 言葉によって思考がなされる
- 言葉にするのが得意になれば頭の回転が早くなる
- その訓練にA4メモが役立つ
ということです。
「言葉によって思考がなされる」という点はとても重要で、「『言葉にできる』は武器になる」の著者梅田悟司さんも、同書の中で、
物事を考えたり、感じたりする時に、無意識のうちに頭の中で発している言葉。それが「内なる言葉」。頭に浮かぶ「内なる言葉」は、単語や分節といった短い言葉であることが多い。「内なる言葉」を磨く唯一の方法は、自分が今、内なる言葉を発しながら考えている事を強く意識した上で、頭に浮かんだ言葉を書き出し、書き出された言葉を軸にしながら、幅と奥行きを持たせていくことに尽きる。(第1章と第2章より、管理人要約)
と言っています[1]。
このA4メモについて、自分の中のネガティブな感情に対処することと、潜在意識を活用する観点からA4メモを捉えたときの立ち位置、またA4メモを書くときのちょっとした工夫の三点を書きたいと思います。
ネガティブな感情にうまく対処する
感情に対処するとき、紙に書くというのはよくある方法であり、心理学的にも効果が認められています。
例えば認知行動療法では、感情を紙に記録することで自動思考を特定する手法があります。
自動思考は、その人固有のものの捉え方で、「状況やできごとを受けて、感情・行動・身体的変化といった反応を引き起こす、すばやい評価的な思考」のことです[2]。これを捉えることがネガティブな状態への対処の第一歩になります。
具体的には、「人前でうまく話せないなんて、リーダーとして不適格だ」や、「あの人はいつも目を合わせてくれないから、自分のことを嫌っているに違いない」などです。
著者の赤羽さんも、「A4メモでは自分の考えを遠慮なく書き記すことで、客観的に自分を見つめることができるようになる」と本書で述べているように、言語によって感情を外部化するのには大きな効果があります。
言語化と潜在意識とA4メモ
本書でいう「言語化されていないもやもやした考え」は、潜在意識にあるものだという考え方があります。
潜在意識というと胡散臭い自己啓発の感じが出てしまいそうですが、潜在意識はユングやフロイトなどの心理学者も取り組んだ、れっきとした研究の対象です。
自分の知る限り潜在意識の働きは科学的にうまく証明できていないと思いますが、潜在意識を活用することで成功に近づいたという本は山ほどありますし[3-9]、経験則としてそれなりに有効なものなのではないか?と考えています。
例えば、発想法の世界では、アイデアを得るためには「寝かせる時間が必要」と言います[3,4]。
(アイデアについて必死に考えた段階の後の)この段階にやってくれば、諸君はもはや直接的にはなんの努力もしない。諸君は問題を全く放棄する。そしてできるだけ完全にこの問題を心の外にほうり出してしまうことである。(中略)それは諸君がその到来を最も期待していない時、諸君を訪れてくる。(アイデアのつくり方より。一部管理人省略)
またフォトリーディング[5]やアファメーション[6-8]も潜在意識を活用する手法です。変わった分野では、芸術作品を創るのに潜在意識と繋がるなんていう本[9]もあります。
この潜在意識の観点からA4メモの働きを考え、他の潜在意識を活かす方法と比較した時の、A4メモの立ち位置を捉えたいと思います。
図1のように、潜在意識と顕在意識の中での思考のありようを図にしました。
顕在意識には「はっきりした思考」があります。
一方潜在意識には、もやもやした思いのような、「思考の素」があります。この「思考の素」は、潜在意識の浅い部分にあるものもあれば、深い部分にあるものもあります。
潜在意識の「思考の素」を顕在意識の「はっきりした思考」にするには言語化が必要です。これは本書でも述べられています。
また潜在意識に「思考の素」を生み出させるには、感情やイメージで種を蒔くことが必要です[6-8]。
この2つのやりとりは、適切な方法で利用したり、訓練することができます。
その方法の例を図2に示します。
この図から、潜在意識の浅いところから、言語化する訓練がA4メモの立ち位置ということになります。その他の手法として、
潜在意識の深いところから、言語化する訓練がモーニングページ
潜在意識に種を蒔くところが、アファメーションやフォトリーディング
となっています。
モーニングページについては「ずっとやりたかったことをやりなさい」[8]で紹介しますが、簡単に説明すると、
「朝起きてすぐの半覚醒状態で、3ページ分ひたすらノートにメモを書く」
というものです。半覚醒状態を使っていることで、より潜在意識の深いところにアクセスできると考えられます。
この深い箇所にアクセスするよりも、浅い部分にある「なんとなくもやもやする感情」や、「頭の中に浮かんだり消えたりするアイデア」を形にすることの方が使用する機会が多いと思うので、A4メモの方に先に取り組んだ方がいいと思います。
アファメーションやフォトリーディングもそれぞれの紹介記事で説明しているので、合わせてご覧ください。
潜在意識を言語化するA4メモのちょっとした工夫
A4メモを、潜在意識の浅いところにある「思考の素」を言語化する訓練と捉えるとすれば、潜在意識へアクセスしやすくすれば、よりA4メモの効果を得られるのでは?と考えました。
そこで、同じく潜在意識にアクセスする手法であるフォトリーディングをするときに使うリラックス法を参考にしました。このリラックス法は4ステップからなります。
- 深く息を吸い込み、目を閉じる
- 体全体をリラックスさせる。数字の「3」を思い浮かべながら、「リラックス」と唱える。
- 精神を穏やかにする。深く息を吸い込み、今度は数字の「2」を思い浮かべながら、「リラックス」と唱える。
- もう一度深く息を吸い込み、精神を穏やかにする。今度は数字の「1」の声が聞こえ、美しいもののイメージが浮かんでくる。
※より具体的な方法が知りたい方は、「あなたもいままでの10倍早く本が読める」をご参考ください
統計的に評価したわけではないのですが、このリラックス法をした時としていない時では、かけるメモの分量や網羅性が増しているという印象があります。
著者の他の本との関連
「ゼロ秒思考 行動編」が未読ですので、読了し次第更新予定です。
最後に
自分もA4メモを毎日書いています。初めは効果をなかなか実感できませんでしたが、あるとき説明を求められ、考えをうまく言葉にできたときは嬉しかったです。
以下参考文献と記事へのリンクです。
合わせてご覧下さい。
[2] 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第2版 要リンク追加
[3] アイデアのつくり方 要リンク追加
[4] 思考の整理学
[5] 新版 あなたもいままでの10倍速く本が読める 要リンク追加
[6] 成功哲学 要リンク追加
[7] ブレインプログラミング 要リンク追加
[8] 1日5分 目的・目標を達成させる 4行日記 要リンク追加
[9] ずっとやりたかったことをやりなさい 要リンク追加
内容紹介/書評のまとめ
内容紹介
- 言葉によって思考はなされる
- 言葉にできるのが得意になれば、頭の回転が早くなる
- 感情も言葉にできれば客観的に向き合える
- もやもやを言葉にする訓練にはA4メモが最適
- A4メモは1ページ、1テーマ、1分以内で、1日最低10枚書く
- A4メモには、頭の回転が早くなるなどの4つの効能がある
- A4メモを使ってロジックツリーが作れる
書評
- 感情を紙に書くと効果があるのは心理学的にも証明されている
- A4メモは、潜在意識の浅いところにある「思考の素」を言語化する訓練
- フォトリーディングのリラックス法を用いると効果が増す印象
はじめにも書いた通り、自分は頭に思い浮かぶことを整理するのが本当に苦手でした。
完璧ではありませんが、毎日10枚メモを書き続けて、だんだんと言葉にするのが早くなったと思います。
人に伝えるときもスッと言いたいことが出るようになってきました。
本書で紹介するA4メモを1分で書くという本書のシンプルな手法は、思考を言語化するという基本的な能力を鍛える優れた方法です。
考えをうまく整理できなくて困っている方
ポイントを絞った説明をうまくできるようになりたい方
もっとコミュニケーションが円滑にできればと考えている方
そんな方がこの方法を試すと、ものすごいことが起こるのではないかと思います。
試すなら今すぐですよ。
次回予告
次回は回復志向の本で、「PDCAノート」を紹介する予定です。
改善活動の基本となるPDCAですが、本当に徹底できているでしょうか。
この本ではPDCAサイクルを回すサポートをするノートの作り方を解説しています。
少しでも早く自分の能力を向上させてみたい方は、ぜひご覧ください。